
2019.5.24
作業場の扉を開けると、平沢漁港がすぐ目の前に広がる「三浦米太郎商店」。創業は明治43年(1910年)、家業として の成り立ちは元治元年(1864年)の漁業から始まり、現在の悦朗社長で十三代目を数えます。
秋田の海に雷鳴とどろく冬になると、海の底から群れをなしてやってくるのが「神魚」とも呼ばれる県魚・ハタハタ。江戸時代から作られているハタハタ寿しは、冬の保存食や正月料理として地域で親しまれてきた、秋田県を代表する郷土料理の一つです。
県内各地でも作り方は異なり、「三浦米太郎商店」では、秋田県産ハタハタと秋田県産米を主原料に、米麹、酒、ゆず、ふのり、人参を加え、創業当時からの味を継承しています。
悦朗社長は、原材料は変えずに“より良いもの”を求め、増田町の米麹を使用して口当たりと麹本来の甘みを、酒は福島県いわき市の古酒に切り替え、古酒ならではのまろやかさを追求するなど、伝統を守りながらさらなる品質向上を図ってきました。
さらに味のアクセントとなっているのが、地元産のゆず。ゆずの皮が、柑橘類の爽やかな香りとともにハタハタの臭みを消し、「三浦米太郎商店」のハタハタ寿しの特徴の一つとなっています。
戦前から受け継がれてきた製法は、手順や手作業の部分はそのままに、それまで目分量や職人の勘に頼っていた配合や温度管理を数値化し、味の安定供給にも努めています。
ハタハタの洗浄や塩漬け、カット、酢漬けといった味の決め手となる下ごしらえは、悦朗社長ご夫妻のみで行うのも先代からの教え。
そうして3日間酢漬けにしたものを冷蔵室で一晩寝かせ、殺菌作用のあるクマザサを敷いて、米や麹、人参、ふのり、ゆずと漬け込み約一ヶ月間発酵させると、甘口でさっぱりと食べやすいハタハタ寿しが完成します。

(「ハタハタ寿し」は2014年に「フードアクションニッポンアワード食文化賞」を受賞)
近年では常温加工食品の開発にも力を入れ、ハタハタの魚卵(ブリコ)をオイル漬けした「ぶりこんふぃ」は、「あきた食のチャンピオンシップ金賞(2015年)」と「農林水産省食料産業局長賞(2016年)」を受賞。県外や海外でのプロモーション活動も頻度を増し、さらなる可能性が期待されます。
「酢が強いとハタハタは溶けてしまうし、弱いと仕上がりが固くなります。麹や酢の力で骨まで柔らかく食べやすくするその加減が、うちで代々受け継がれてきた技ですね」と悦朗社長。昨年には跡継ぎとなるご長男も帰郷し、郷土の味はまた脈々と受け継がれていきます。
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